「また、辞めた。何が悪かったんだろう?」
「せっかく育ってきたのに」
「あと半年いれば戦力に…」
そんな風に思いながら、また一人、社員が会社を去っていく――。
この“離職の連鎖”は、どこの会社にも起こりうることです。でも、実は定着している会社には“共通点”があるんです。
この記事では、社労士の視点から、「辞めたくなる理由」=離職の6つの原因を処方箋に変えながら、“人が育ち、根づく職場づくり”のヒントをお届けします。
- 採用してもすぐ辞められて困っている方
- 評価や待遇に不満を感じさせたくない方
- 社員が定着する職場づくりを目指す方
なぜ、離職は「会社の損失」になるのか?
離職が起きると、採用費・教育コストの損失だけでなく、
- 業務の引継ぎ不足
- チームの士気低下
- 顧客対応の質の変化
- 「また誰か辞めるかも…」という不安の蔓延
といった見えにくいダメージが、じわじわと会社をむしばみます。
離職を防ぐ6つの処方箋
ここからは、社員が会社を辞める6つの主な原因と、それぞれに対応する処方箋を紹介していきます。
人間関係のモヤモヤには「小さな対話」の習慣を
人が会社を辞める理由で最も多いのが「人間関係」。
でも、原因は大きなケンカやパワハラではなく、「ちゃんと見てもらえていない」「聞いてもらえない」という小さなすれ違いの積み重ねだったりします。
だからこそ、
- 月1回の1on1面談
- 業務に関係ない雑談タイムの導入
- 「ありがとう」を言葉にする文化づくり
といった、“小さな接点”を意識的に持つことで、「ここに居てもいいんだ」と感じられる安心感につながります。

辞めた理由は“人間関係”でも、定着の理由も“人間関係”なんですよね



良くも悪くも、人が人を動かします
評価への不満には「納得できる仕組み」を
どんなに頑張っても、「誰が何を基準に評価しているのか分からない」状態だと、社員のやる気は一気に下がってしまいます。
そこで大切なのは、評価の“見える化”と“フィードバック”です。
たとえば
- 数値目標だけでなく「行動目標」も加える
- 上司からのフィードバックは年1回ではなく3ヶ月ごとに
- チーム評価+個人評価のダブル軸での運用
評価制度は、給与や昇進のためだけでなく、「頑張りを見てくれている」と伝える手段でもあるのです。



“どう見られているか分からない”って、けっこうストレスかも…



“伝わるフィードバック”を意識したいですね
成長できないと感じる人には「未来の選択肢」を
「自分はこの会社で、どう成長できるのか?」その問いに答えられない職場は、特に若手から離れていきます。
すべての人に“出世の階段”を用意しなくても、
- キャリア面談
- 新しい仕事へのチャレンジ
- 外部研修や副業の推奨
といった、「選べる余白」があるだけで、人は前向きに働けます。
「成長=昇進」ではありません。“個人の可能性をどう広げられるか”という視点が、定着につながります。



『このままでいいのかな』という不安が人を辞めさせるんですね



逆に『この会社でやりたいことがある』と思えたら、人は残ってくれます
働きすぎの現場には「業務の棚卸し」と「仕組み改善」
「人が足りないから仕方ない」と我慢を続けていると、ある日突然、疲れ果てた社員が去ってしまいます。
だからこそ、
- 毎月の業務を棚卸しして見直す
- 属人化していた仕事をマニュアル化・チーム制にする
- ITツールでルーティン作業を自動化する
といった「業務のダイエット」が必要です。
“がんばる”ことに頼らず、“しくみで回す”ことが、離職を防ぐ鍵です。



根性よりも構造!



“人手が足りない”の前に、“業務をどう減らすか”が大切です
経営への不信感には「会社のストーリーを語る」
会社がどこに向かっているのかが見えないと、社員は不安になります。「この会社、大丈夫かな…」と感じたら、離職の予兆です。それを防ぐには、
- 社長が定期的にビジョンを言葉にして伝える
- 数字や目標だけでなく、「なぜその方向に進むのか」背景を話す
- 社内報や会議などで経営陣の考えを可視化する
など、「見える経営」を意識することが大切です。



“将来どうなるか分からない”会社は不安になります



“将来を語ってくれる”会社を信じたくなるものですよね
ライフとの両立には「選べる働き方」と「柔軟な制度」
出産・育児・介護・体調不良――社員にはそれぞれ、会社だけではない人生の時間があります。
そんな時に選べる働き方があれば、「ここで働き続けたい」と思ってもらえる可能性はグッと高まります。
- リモート勤務や時短勤務の導入
- 勤務時間の選択制(午前・午後シフトなど)
- 働く場所や曜日を相談できる風土
“正社員=フルタイム固定”に縛られすぎない柔軟性が、これからの時代の定着率を大きく左右していきます。



“働きたくても働けない”をなくす制度があるかどうか…



それだけで会社への信頼感は大きく変わります!
辞めない組織は、日々の“ちょっとした気づかい”からできている
「辞めさせない方法」ではなく、「ここで働きたいと思ってもらえる土台」を整える。それが、離職防止の本質です。
離職の裏には、必ず理由があります。
その声を拾い、仕組みに変え、行動に落とし込めば――
「また辞めた…」は、「また仲間が増えた!」に、きっと変わります。